Alva Noto & Ryuichi Sakamoto at Barbican
From left, Ryuichi Sakamoto, Alva Noto (c) photo: Barbican Alva Noto & Ryuichi Sakamoto: TWO Produced by the Barbican in association with Thirty Three Thirty Three 2018年6月20日 Barbican Centre Barbican Hall www.barbican.org.uk/ バービカン・センタープロデュース、坂本龍一&アルヴァ・ノト「TWO」が6月20日、バービカン・ホールで開催された。会場に入りまず、目に飛び込んできたのは、ステージ後ろの壁に設置された長方形の大型スクリーン。山吹色のスクーンの中央に黒で「TWO」の文字。その前にグランドピアノ、様々な電子楽器が坂本氏、アルヴァ氏と、左右対称に置かれていた。 二人が舞台に登場し、客席から大きな拍手が起こり、瞬時にシーンと静まり返ると、坂本氏がグランドピアノの弦をピンっと弾き始める。それに続きアルヴァ氏はスローテンポの重低音を出し、たまにキーンと高音が混じり、それはまるでホラー映画の一場面を連想させるような始まりだった。山吹色であったスクリーンは黒のバックに白い螺旋状の線、または吊り橋のような線状が現れ、彼らの音と共に緩やかに規律を守って動き出す。観客は両者が作り出す音を最大限の集中力を使って聞き入っていた。坂本氏は頭をグランドピアノに突っ込むように腰を曲げた体制で、音を作り出していた。 もしかしたら観客の中にはコンテンポラリー音楽ということを知らず、「戦場のメリークリスマス」や「ラストエンペラー」、最近手掛けた、韓国映画「天命の城」のようなメロディーある音楽を期待していた人もいたかもしれない。 二人の音はメロディーというよりも、音の本質を追求するようなユニークな「音」の融合である。ピアノと電子音と全く異なる音はそれぞれの波長を生み出し、それが1つになる。SFチックでもあり、宇宙的であり、人間の潜在意識に響くような音。パフォーマンス20分が経過した頃に、やはりスローなメロディをピアノで弾き始める坂本氏。そのシンプルな旋律になぜか物悲しさを感じたのは私だけであろうか。そしてアルヴァ氏はまるで病院の人工呼吸器か心電図のような音を作り出す。彼の出す重低音は何か心の奥底にある不安な気持ちを掘り出すようで、逆に坂本氏のピアノの音で希望を見出す感じを受けた。もしかしたら坂本氏が数年前に癌に犯され、克服した時を再現しているようにも思えた。他にもマイクの近くで紙をクシャクチャさせ音にしたりと感性を研ぎ澄まさせるコンサートとなった。 楽曲が進むにつれ、未来的な音、まるでAI(人工知能)を意識しているような音楽に変わり、DNAを連想させるような不思議な音であった。これは初めて70年代にテクノを聴いた時の衝撃に近いかもしれない。全体的に理解するには難しくも感じたが、彼らの進化し続ける音へのチャレンジは世界中から注目を集めている。何か、人生観というか、人間が持つ、不安、疑心、エネルギー、希望などを強く感じさせられるパフォーマンスであり、彼らの貪欲なまでのユニークな音を作り出す試みを素晴らしく思った。そして楽曲ごとに変化する、スクーンに映し出される螺旋状の線や幾何学模様は、また最後に山吹色のバックグラウンドと「TWO」の黒い文字に戻っていた。 坂本氏とドイツ人、アルヴァ氏のコラボレーションは2002年から始まり、今までに6枚のアルバムを発表している。世界的有名な近代建築の先駆け者である米国人建築家、フィリップ・ジョンソン氏の「グラスハウス」にてガラスの家、そのものを楽器として使い、または自然界の音を取り入れ、共鳴し合うユニークなパフォーマンスを行った。2018年、今年は「Glass」というアルバムもリリースしている。 アルヴァ・ノトこと、カールステン・ニコライ氏は、ドイツ、ケムニッツ出身で、電子音楽、実験音楽などを主に手がけており、坂本龍一氏をはじめ、数々の日本人ミュージッシャンともコラボレーションをしている。彼の音楽は日常にある何気ない電子機器の音を素材として使用していたりもする。さらに建築やランドスケープデザインを学び、音と空間の理論的性質への追求もしている。 このパフォーマンス以外にも坂本氏はドキュメンタリー映画「Code」を6月22日に上演、6月19日から7月8日まで、自身が手がける「MODE(モード)をロンドンのみならず、英国の主要都市で行っている。22日にドキュメンタリー映画「Code」を6月22日にBFIサウスバンクにて上演、24日はイギリス人ミュージッシャン、コンポーザー、ライター、キューレーターであるディビッド・トゥープ氏とのコラボレーションもロンドンで行われた。 私がニューヨークに在住していた90年代、坂本氏も在住しておられ、毎年、夏になるとセントラルパークで、有名ミュージシャンの多くが出演するサマーフェスディバルに聞きに行っていた。まさかまたロンドンで生の坂本氏の音楽を聞く事ができるとは夢のようだと思った。そしてその喜びは23日細野晴臣のコンサートでも再現された。 坂本龍一氏プロデュース、YMO細野晴臣氏のロンドン初公演記事へ
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