[連載]六韜三略(りくとうさんりゃく)〜2


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【筆者名】 

 澤田耕治


【ご挨拶】

 私は1984年4月にLONDONに赴任いたしました。その後、東京での生活よりもLONDONでの生活を選び今日に至っております。 外国で暮らす日本人として日本の良さや英国との違いを感じ取りながら日々暮らしています。


 投稿にあたり、自分の生い立ちから紹介するのが日本の一般的な方法でしょうが、私は著名人でもありませんし、自慢できるほどの経験を重ねてきたわけではありません。30-40歳代で欧州各地でのビジネスを経験し、現在日系の企業に勤務している際立った能力や才能があるわけでもありません。


 そんな私がこれまで経験したこと、遭遇した出来事や一つのテーマを中心にしてその時の状況や感想を紹介したい、と考え投稿いたします。


【テーマ】

① 英国での生活を通して思うこと。

② 日英比較論

③ 日本を外から見た感想。

④ 英国生活を振り返って思うこと。



第二回 ジグソーパズル

 読者には働いている方もいらっしゃると想像するので、仕事について記述する。


 日本から派遣された方からよく“英国人は働かない” という感想をよく耳にする。いや、「した」といったほうが正確かも知れない。派遣された駐在員の尺度で考えればそうかもしれないが、現地採用社員にはJOB DESCRIPTIONなるもので業務範囲を決めているわけですから、ある程度いたし方ない点もあると私は思う。


 英国で働くからには、こちらのビジネス社会の習慣に従わなければならないのだから、日本人にとって理解しづらいかもしれないが、彼らが働かないのでなく、契約以外のことはしない、と言い換えたほうが良いのかもしれない。(もちろん個人的には別の意見もあるが、ここは一般論として聞いていただきたい) 


 私の世代の日本人は、上司が掃除していたら偉いと思った、そして自らもすぐに手を下していたものである。しかしこちらではそうではなさそうだ。(余談だが、今の若い日本人社員も似たところがある。)


 学校の教室は生徒自ら掃除をする日本人とその習慣がない社会の違いかもしれない。定時になるとさっと帰る英国人を見て、“こちらの人は働かない” と評してよいのだろうか。 逆に英国人社員から見れば “なぜ日本人は毎日遅くまで会社にいるのか?”と思っているはず。これは私が赴任した時から言われていたので30年間余り変わっていないようだ。


 これには採用の仕方も大きく影響していると思う。最近の日本もだいぶ変わってきたようだが、日本では真っ白な状態の新卒者を採用し各企業のカラーに染めAll Round Playerを育成しようとする傾向がある。一方こちらでは、会社が求める職務を遂行できる人を採用するように思える。つまり、直径の違いこそあれみんな同じ円形で同心円社会の(日本)企業と、形はそれぞれ違うけれどもジグソーパズルのようにそれぞれの社員が形は違うけれども会社が求める形状に収まって組織が成り立っている(英国)企業、との違いではないかと思う。


 ここでどちらの組織が良い、ということを述べるつもりはない。ただ最初から雇用形態に違いがあるのだから、単純比較はできないと申し上げたい。


 私の経験で、“私はこの仕事に四年間従事し市場については精通している。” などと面接時に述べた社員の実力が大したことなかったりすることはよくあった。 第一、日本人社員は四年間くらいの経験で精通しているなどと言わないのが普通である。(もちろん精通していると日本語で解釈したのは私であるから、責任はこちらにあるのであるが)これらの年数に対する認識にも日英の違いがある。いろいろなことを経験して企業内で自分をPROMOTEしていく人生が良いのか、あるいは自分で“この道で生きていこう”と決断してJOB HOPPINGしながら生きていくのが良いか、は自分次第である。


 そんなに転職して、出世、給与そして年金など将来は困らないのかと心配する方もいると想像する。JOB HOPPINGの英国社会であるから転職しても、それぞれの会社で積み立ててきた年金基金は、退職後ひとつにまとめて自分の判断で運用できるようになっている。これも自己責任の社会を表しているのではないだろうか。





*六韜三略(りくとうさんりゃく)とは、人生を歩むうえで、また社会で生活していく上で、役に立つ教え。人生訓、処世術。中国の兵書、「六韜」と「三略」の併称。「六韜」は文・武・竜・虎・豹・犬の六巻があり、周の太公望呂尚の作とされている。「三略」は上巻、中巻、下巻の三巻があり、前漢の黄石公の作とされている。「韜」は剣袋や弓袋のこと、「略」は作戦や計略のこと。