連載小説:Every Story is a Love Story 第4話(Only Japanese)

16.10.2017

4

すみれの場合 後半_1

 

 

 ノッティングヒルカーニバルの朝、ウェインと一緒に部屋を出て、駅でお互いの待ち合わせ場所に向かった。

「あとでね、スー!楽しもう!」

「じゃあ16時ころに連絡するね。ウェインも楽しんで。」

しかし16時の合流よりもちょっとだけ、私は最初の待ち合わせに嫌な予感がしていた。そしてレイちゃんと文香と合流した瞬間、二人とも同じことを考えていることがわかった。

「多分、ラティーナたちはすごく遅れてくるよね…。」

誰もが怖くて言えなかったことを言葉にしたのは文香だった。その言葉をした瞬間、3人は顔を見合わせて大笑いした。じゃあカフェで待ってようよと近くにあったイギリスのチェーン店カフェ、コスタに向かった。女子が3人集まれば自然と恋の話になっていく。

「レイちゃんは今好きな人いないの?同じクラス結構かっこいい人多くない?ほら、イタリアンの…」

「ルカのこと?かわいいけど、なんか悪ガキって感じ。文香ああいうの好きなの?紹介しようか?」

「いやー、私、気づいたけど、ヨーロピアンって近くで見ると顔が濃すぎる私には。やっぱり日本人のほうがいいかも。それよりすーちゃん、あとから合流するウェインって人とどんな感じなの?」

「文香よく聞いてくれた!わたしもすーちゃんのフラットメイト少し気になってたの。」

「えー、そんな特に何もないよ!」

「でも毎晩話すんだよね?この前授業で言ってたじゃない、そんなこと。」

「え、そうなの?わたし知らなかった!いいなぁすーちゃんと文香は同じクラスで。すーちゃんはウェインにドキドキすることないの?」

「うーん、ドキドキすることかぁ。ウェインはすごく英語ができるから、話すとき自分の英語はあってるかどうかってことでは常にドキドキはしている。」

「なにそれー!すーちゃんかわいい。」

「今日ウェインに会えないの残念。会いたかった!」

「きっと同じことウェインも言うよ、相当れいちゃんの話してるから。」

「やだー!恥ずかしい。文香どんな感じか教えてね」

 

そんな話をしていたら1時間半も経っていて、やっとアンジェラたちが現れた。徹底的に時間通りに来いということについて3人で必死に説明してみたが、でも天気いいから今日を楽しもうよのアンジェラの一言で、なんか許してしまい笑ってしまった。ふと横をみるとレイちゃんも文香もあきれながらも笑ってて、朝感じていた嫌な予感はいつの間にか吹き飛んでいった。 カーニバルはゆるい雰囲気で始まり、セクシーな衣装を着たダンサーさんたちもまたゆるい雰囲気で踊っていた。しかしアンジェラが言っていたとおり天気がよいからみんな思い思いにゆるーく一緒に踊ったり、気づいたらダンサーさんたちとハグしたり、日本では体験できない祭りを楽しんだ。そんな呑気で楽しい時間を過ごしていたらあっという間に16時過ぎていて、ウェインからパブにいるねというメッセージが携帯に残っていた。

 

アンジェラたちのこと笑えないなーと思いつつ、カーニバルの雰囲気を引きずったまま、ゆるゆるとパブに向かった。 一緒にカーニバルにいったのは10人以上いたが、レイちゃんは引越し作業で先に帰ったし他にもいつの間にかいなくなってて7、8人でパブに向かった。ウェインのグループも同じくらいの人数だ。最初はお互いのグループ内で話していたり、カーニバルのときのなごやかで呑気なムードとは打って変わり、どことなく気まずい雰囲気が流れていた。どうしたらいいかな、と思ったときに後ろでアンジェラが派手に転んで酒をぶちまけた。その瞬間みんなが彼女に駆け寄り、大丈夫かと声をかけたり酒を買いなおしてあげてたり汚れた洋服を拭いたりしていた。それがキッカケとなり雰囲気が一変し、一気に打ち解け始めた。キッカケを作ったアンジェラはやはり人気者で、ここでも遺憾なくその人たらしっぷりを発揮していた。私も最初はウェインの学校の友人で日本人の拓也くんと文香と3人で話していたが、いつのまにかアンジェラに引っ張られ、いろんな人たちと話はじめていた。特にウェインの学校の学生でスイスから来ていたサラとはおしゃれが好きという共通点もあり、すぐに意気投合、アンジェラと今ここにいない可哀想なれいちゃんも含めてロンドンお買い物ツアー開催が決定した。みんながそれぞれ楽しんでるみたいでよかった、と一息ついたときにふとウェインと目があった。お互い微笑み合いながら近づく。

「最初はどうなるかと思ったけど、盛り上がってよかったね、ウェイン」

「スーのおかげだよ。」

「いや、違う。アンジェラが転んだおかげ。」お互い顔を見合わせながら笑いあう。

「そうだね。あ、あそこのラテン合同軍団がクラブに行こうって言い始めてる、ねぇスー疲れてるしこのまま逃げちゃおう。」

「え、でも大丈夫かな、ほっといて」

「あいつらなら大丈夫だよ、酒を飲んだらダンスが必要なんだっていつも言ってる。むしろそれについて行ったら、僕らのほうが疲れちゃうよ。」

「…たしかに。何人か帰ってるのもいるし、よし抜け出そう!」

こうしてホスト二人はこっそりと、盛り上がっているパブから抜け出した。 帰り道、お互いにその日何があったかを報告しあう。ウェインたちのグループも男女混合だがやっぱり女子たちのパワーが圧倒的に強いこと、みんな進学前提だから普段はあまり出歩かないけど、やっぱりこういう祭りがあると盛り上がるね、などめずらしくウェインが饒舌だった。

「ウェイン、今日本当に楽しかったんだね。なんだかそんなウェインみてるとわたしもたのしい。」

「ははは、スーがこんなに楽しい夜のキッカケを作ってくれたからだよ。」気持ちの良い夏の夜、親密な空気とお酒の酔いにあわせて、いつの間にかさりげなく手をつなぎながらふたりのホームへ帰っていった。

 

次の日、当たり前のようにリビングで挨拶してお互いの学校へ登校する。なんとなくお酒は残っていて少しテンションは低いが、いつもどおりの朝。学校に行くと、大きなサングラスで顔がパンパンに腫れているのを隠そうとむなしい努力をしているアンジェラがいた。

「…アンジェラ、どうしたの。」

「聞かないで、夜通し飲んで踊ってたらこうなった。なんでスーは来なかったのよ?盛り上がったのに!」あの後とても盛り上がったことは、顔の腫れ具合で想像できた。

「疲れたから、ウェインと二人で帰ったよ。」

「そうだったの!!なんかあった?チューとかした?」

「アンジェラ、まだお酒抜けてないの、もう。なにもあるわけ・・」そこでわたしは、ウェインと帰り道ずっと手を握って帰ったことを思い出した。

「あ、なにかあったね」アンジェラは鋭い。でも手を握って帰っただけと言ったところで、それこそ自分のほうが高校生みたいだなと思ったから適当にはぐらかしていたところに、先生が教室に入ってきた。 その日はずっと、どこかボーっとしていた。レイちゃんとご飯に行く約束もすっぽかしそうになったくらいに。レイちゃんに声をかけられてやっとそのことを思い出した。いつものローストチキンの美味しいナンドスで話していたが、突然レイちゃんからツッコミがはいった。

「すーちゃん。昨日ウェインとなにかあった?」

「どうしたの突然。」

「それはこっちのセリフだよ。今日はすーちゃん心ここにあらずって感じ。ねぇなにがあったの?」

「いやぁ実は昨日の帰り道気づいたらウェインと手をつないで帰ってたんだけど、今日の朝はそんなこともなかったようにお互いいつもどおりだったんだよね。そのことに妙に拍子抜けしちゃって。」

「なるほど、なんだかピュアだねすーちゃん、高校生の初恋みたい。」

「それさ、私も同じことを思ったの。手をつないだだけなんだけど、逆に今とても意識している。」

「そりゃ気になるよー!!」

「でもウェインがガールフレンドいるかとかそんなことすら実は知らないのよね。」

「いつも夜話してて、その話が出てないならいないと思うけど…。」

「わたしもそう思うけどさ、もう一つわからなくて。」

「そうか…。あ、今週末サラちゃんって子とアンジェラとショッピング祭りするんだから、そのときウェインが学校でどんな感じとかちょっと探りいれてみよう!」

私とレイちゃん、会話がまるで高校生。そう思いながらもそんな時間がとても心地よいこともわかっていた。

 

つづく

 

 

原田明奈

千葉県出身アラサー女子

今作が小説家デビュー、前職はお皿洗いからパラリーガルまで幅広い。いろんなことにとりあえず首を突っ込んでみるチャレンジャー。

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