ロイヤル・バレエ団『シルビア』キャスト比較

27.12.2017

 

Ballet 'Sylvia' at the Royal Opera House

 

アシュトン作『シルビア』キャスト比較

 

 

Lauren Cuthbertson as Sylvia & Artists of The Royal Ballet © Alice Pennefather ROH 2017

 

 

ロイヤルバレエ団「シルヴィア」の公演が12/16に無事終了した。

 

今回は主に3組のキャストが組まれ、主役のシルヴィアを踊る個性あるダンサーについて特徴をまとめてみた。

タイトルロールは3人のロイヤルを代表するプリンシパル、マリアネラ・ヌニェス、ローレン・カスバートソン、ナタリア・オシポワ。

 

シルヴィア役のキャラクター造形で特に個性が出るのは1幕のエロスとアミンタに対しての接し方、2幕のオリオンのプレゼント攻撃に対する断り方、その2点であろう。

元々シルヴィアは狩猟の女神ディアナ付きのニンフという設定だ。ディアナが愛を重要だとは考えていないので、お付きのシルヴィアも止せばいいのに愛の神様エロスに対して攻撃しにいくのである。

 

ここでローレン・カスバートソンのシルヴィアはとても無垢な印象を受けた。仕えているディアナが愛に対して厳しいから自分もそうなのだ、ということに対して特に疑問はないが、だからといってシルヴィア自体は実はエロスに対してあまり負の感情を感じていないような役作りに感じた。カスバートソンのシルヴィアは愛の神様エロスに対してあまり敵意がない。なぜなら彼女はエロスの管轄する愛について理解できず、だからとても無垢な印象を受けたのだ。

エロスを庇って倒れたアミンタに対して同情をみせたとき、彼女は優しさに芽生える。そしてオリオンからのプレゼント攻撃を受けてるとき、彼女の心はここにあらずという感じだ。もうアミンタのことで頭がいっぱいであり、目の前に出される美しい宝石などは虚しいだけ、という感じだ。まさにピュアな初恋モードのシルヴィアである。ニンフという清潔なイメージにピュアな可憐さを足した、カスバートソンのシルヴィア像は、やはりロイヤルバレエ団の演劇性をよく表しているといえるだろう。

Marianela Nunez as Sylvia & Reece Clarke as Aminta © Alice Pennefather ROH 2017

 

ナタリア・オシポワの場合、カスバートソンよりもエロスに対しては明確な敵意を感じさせた。それは決して意地悪なものではない。だかオシポワの場合は無垢ゆえの潔癖性、そこからくる攻撃的なものを感じた。ディアナは狩猟の女神だが、そのディアナに仕えるニンフ、という印象も彼女が一番強い。明確な意思が強い分、倒れたアミンタのそばに戻ってきたときには、そんな自分に対して戸惑っているような印象も受けた。シルヴィアにとって倒れたアミンタに寄り添うとき初めての感情を味わい、そのことに戸惑いを感じているというようにみえた。オリオンのプレゼント攻撃のときはやはり彼女は明確にNoを突きつける。女神ディアナに仕えるニンフとしての純粋なプライド、という感じだ。だからこそ、オリオン一味が眠りについた後エロスに対して祈る姿に心がとても動かされた。

Natalia Osipova as Sylvia © Alice Pennefather ROH 2017

 

マリアネラ・ヌニェスのシルヴィアは、ニンフの持つコケティッシュさな可愛らしさが強調されたイメージである。エロスに対しては攻撃しようと思っているが、なぜと言われると戸惑いそうな感じであるし、だが身分の低い羊飼いのアミンタが場を覗いていたことに対しては持って生まれた品位で彼を圧倒しようとする。先の2人がどこか可愛らしい少女のような印象があるのだが、ヌニェスの場合はやはりニンフという少しだけ現実離れしてる存在という部分を感じることができた。オリオンのプレゼント攻撃も、こんな現実的なものに意味はないと言っている印象が強く、だからこそ着替えてでてきたときの妖艶さにハッとしたのだろう。

Marianela Nunez as Sylvia & Vadim Muntagirov as Aminta © Alice Pennefather ROH 2017

 

 

三者三様のシルヴィアであり、どのキャラクター造形もそれぞれに深く説得力があるものである。こういった楽しみ方ができるのも、ロイヤルバレエ団ならではの贅沢だろう。

 

最後に補足的に、オシポワのパートナーを務めたフェデリコ・ボネリについてもまとめたいと思う。

やはり彼は舞台の上でとても誠実に役を生き相手を受け止めている。彼のパフォーマンスを観ていると1つ1つのステップの意味をしっかりと理解していること、なおかつパートナーを信頼し相手に委ねていること、しかし支えるときはしっかりとサポートしている、ということをひしひしと感じた。見た目はいつまでも理想の王子様という印象だが、もうベテランの域に達している。ぜひその舞台の上での誠実さを多くの若手たちが吸収していってほしいと余計なお世話だが強く感じた。それほどまでに素晴らしいパフォーマンスだった。

 

 

 

 

Kana Hashimoto/橋本佳奈

1989年生

物書き見習い。元演劇制作者。専門はイギリスバレエ•演劇•ミュージカル批評。ロンドン留学時に3ヶ月で40ステージ以上のバレエを観たほどのバレエ好き。美しい衣裳とロンドンが大好物。http://bestest-k.hatenablog.com

 

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

Copyright © 2017 J News UK 2017