Royal Ballet ‘Swan Lake’ New Production at Royal Opera House

15.06.2018

ロイヤル・オペラ・ハウス:ロイヤル・バレエ団『白鳥の湖』

2018年5月17日〜6月21日

 

 

マリネラ・ヌネスとワディム・ムンタギロフ - 新作「白鳥の湖」予告編 ©️ROH,2018. Photo: Bill Cooper

 

 

制作:リアム・スカーレット

オリジナル振り付け:フレドリック・アシュトン

新たな振り付け:リアム・スカーレット

舞台美術:ジョン・マクファレン

 

オデット/オディール:マリネラ・ヌネス

ジークフリード王子:ワディム・ムンタギロフ

ロットバルト:ベネット・ガーツサイド

ジークフリードの友人、ベノー:アレキサンダー・キャンベル

ジークフリードの二人の妹:高田茜、フランチェスカ・ヘイワード

 

今年5月から公開されているロイヤル・バレエ団の「白鳥の湖」は若手アーチスト・振付師であるリアム・スカーレット氏によって生まれ変わった。19世紀のマスターピースといわれる伝統的、重厚な舞台に新たな風を吹き込み、それが見事に溶け合った素晴らしい作品となった。この作品は3年もの歳月を費やし、700着以上ものコスチュームと大掛かりな舞台セットが新たにデザインされ作りかえられた。今までの舞台セットも豪華で素晴らしかったが、今回はその上を遥かに超える出来であろう。

 

リアム氏は今までにも数々の優れた作品を生み出し、彼の独特の感性と1つ1つの踊りのステップは優雅で美しく表現され、ダンサー1人1人の特徴を最大限に引き出せる振付師なのでないかと思う。新作「白鳥の湖」でもコール・ド・バレエのフォーメイションの美しさ、1つ1つの振り付けの美しさに目が釘になるほどであった。大勢のダンサーを舞台上で操る様はまるで魔法のようでもある。また、1幕と2幕の変わり目が全く観客には分からないほどの素晴らしい技法であり、舞台制作者としての力量も今回改めて見る事ができた。

 

そしてその舞台を支える舞台美術家、ジョン・マクファレン氏。また彼のセットやチュチュなどのコスチュームが素晴らしかった。ビロードやレースをふんだんに使用、細かいディテールが施された衣装は芸術作品である。舞台の始まり方も従来の作品とは異なるため舞台セットも新たに作り変えられ、照明なども工夫され、特に3幕の宮殿内のボールルームのセットは豪華絢爛で、ロイヤル・バレエ団の威厳と誇りを感じた。

 

この時の主役プリンシパルはマリネラ・ヌネスとワディム・ムンタギロフ。両者とも、誰もが認める実力派ダンサー。

新作「白鳥の湖」序幕の始まりは、真っ暗な舞台中央からオデット(マリネラ・ヌネス)が浮かび上がり、その後ろから魔法使いのロットバルトが現れ、オデットを呪いで白鳥に変えてしまう。再び二人は闇の中に消えて行く。

 

1幕、王子、ジークフリードの誕生日で集まった人たちと踊りを披露。この時の全体のフォーメーションもリアム氏ならではの難しく、しかし美しいバランスのとれたものになっていた。特に目を引いたのは高田茜、アレキサンダー・キャンベル、フランチェスカ・ヘイワードの3人のプリンシパルによるパ・ド・トロア。軽やかながらも高度なテクニックとテンポの速い踊りであった。プリンシパル女性二人は水色のレースの美しい衣装。舞台美術家、ジョン氏のセンスの良さを感じる。王妃が現れ、ジークフリード(ワディム・ムンタギロフ)に妃を選ぶよう伝え、父の形見の弓矢をプレゼントとして渡す。彼の弓を受け取る嬉しさと、妃を選ばなくてはいけないという苦悩する演技も見事であった。

 

2幕コール・ド・バレエの美しいフォーメーション ©️ROH,2018. Photo: Bill Cooper

 

2幕コール・ド・バレエ ©️ROH,2018. Photo: Bill Cooper

 

2幕オデット役マリネラ・ヌネス ©️ROH,2018. Photo: Bill Cooper

 

2幕オデット役マリネラ・ヌネス ©️ROH,2018. Photo: Bill Cooper

 

 

この1幕と2幕への移り方はとても自然で、王子が宮殿からさまよい、湖に行く様子が上手く表現されている。月夜に照らされ、白鳥たちが現れる。コール・ド・バレエの振り付けも今までとは変わり、しかしロイヤル特有の品格としなやかさを最大に見せせている。ワディムのソロもエレガントで美しく、安定した踊りだった。ヌネスのオデットもそれに劣らず美しく、腕の細やかで微妙な動きと表情で、か弱いオデットを表現。

 

3幕に移り、シーンは宮殿内。この幕ではスパニッシュダンス、ロシアダンスなど、民族ダンスが見られるが、ここでもまた衣装の素晴らしさが目を引く。それぞれの特徴を生かし、個性的なデザインである。しかも舞台自体が豪華絢爛であるにも関わらず、衣装やダンサーを、より引き出す要素になっていた。黒鳥、オディールが登場。先ほどまでのか弱そうなオデットとは全くの別人、自信に満ち、魅惑的な演技と踊りでプリンシパルとしての存在をアピールするマリネラ。3幕の見せ所といえば、王子のソロとオディールの「32回フェッテ」。もちろん最高の踊りを披露してくれた。

 

オディール役マリネラ・ヌネスとジークフリード役ワディム・ムンタギロフ ©️ROH,2018. Photo: Bill Cooper

 

 

4幕、新作はハッピーエンドではなく、チャイコフスキーオリジナルの結末になっていた。オデットは死に、人間に戻った彼女をジークフリードが見つけ、幕が下りる。

 

正直なところ、数年前にリアム・スカーレット氏が「白鳥の湖」をリメイクするという話を聞いた時、どんなコンテンポラリーな舞台になるのであろうかっと心配だった。ロイヤル・バレエ団にはやはり、クラッシックの王道を貫いて欲しいという願いもあり、イングリッシュ・ナショナル・バレエ団のジゼルがあまりにも斬新な変化を遂げていたからである。(あの作品も素晴らしい。レビューは次回)しかし、リアム氏は私の期待を大幅に裏切り、19世紀の不朽の名作と全く新しい彼独自のアイディアを融合させ、素晴らしい舞台を作り出した。この作品は本当に素晴らしい。何度でも観に行きたいと思えるものだ。

 

ここで少し、二人の主役プリンシパルの紹介をしよう。

アルゼンチン、ブエノスアイレス出身のマリネラ・ヌネスは今年の2月でロイヤル・バレエ団、ダンサーとして20周年を迎えた。16歳でロイヤル・バレエ・スクールに編入し、翌年にはバレエ団に入団。2000年にはファースト・ソリスト、2年後の2002年にはプリンシパルに、異例の早さで昇格。当時まだ20歳だった。彼女はクラシックはもちろん、ドラマチックな作品やコンテンポラリーダンスを世界的に有名な振付師、フレドリック・アシュトン、ジョージ・バレンチーン、ジョン・クランコ、ケニス・マクミラン、ウェイン・マクグレガー、リアム・スカーレット、クリストファー・ウィルドンと共に踊ってきた。また、2013年には、優れたダンサーに贈られるオリバー賞も受賞。それまでも2005年、2012年とベストダンサーとして選ばれ、2009年は母国アルゼンチンでもベストダンサーに選ばれるなど、数々の賞を受けている。ゲストダンサーとしても世界各国のバレエ団と共に踊り、活躍中。

 

 

ワディム・ムンタギロフはロシア出身、名門ペルム・バレエ・スクールでバレエを学び、のちロイヤル・バレエ・スクール、アッパースクールへ編入。卒業後イングリッシュ・ナショナル・バレエ団に入団し、2010年、ファーストソリスト、2011年プリンシパル、そして2012年にはリード・プリンシパルに昇格。そして2014年からロイヤル・バレエ団でプリンシパルとして活躍中。彼もまた数々の賞を受賞している。2011年、最優秀男性パフォーマンス賞、2015年、ベスト男性ダンサー賞等。またゲストダンサーとしてもマリインスキーバレエ団、アメリカンバレエシアター、日本の新国立劇場バレエ団などでも踊っている。彼の父、アレキサンダー・ムンタギロフ氏も素晴らしいダンサーであり、現在は講師として活躍、ここ5年ほどは毎年夏にロンドンでも教えている。

 

 

 

 

 

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