連載小説:Every Story is a Love Story 第11話(Only Japanese)

17.06.2018

11

持つべきものは年上の女友達2

 

 

部署内女子お食事会、という名の普段のうっぷんをおいしいものを食べて晴らす会は、定期的に行われている。メンバーは変わりつつも2,3か月に1度の割合で部署の女性が仲良く集うことができるのは、なんだかんだ職場環境がよい証拠だろうな、とぼんやりと考えていた。そのタイミングで次回の幹事が声をかけてきた。
「菜々子先輩、次回はあのイタリアンでいいですか?なかなか最近行ってなかったし。」
「いいんじゃない?久しぶりにあのお店のステーキ食べたいね!」
「よかった、じゃあ予約します!久しぶりと言えばすみれちゃん、帰ってきたみたいなんです。誘いませんか?みんな大好きだったし、ロンドンの話聞きたいじゃないですか。」
「あぁ懐かしいね。ぜひ誘って!すみれちゃん元気かな?」
「どうやら外国人の彼氏ができたらしいですよー。ふふふ、当日いろいろ聞きましょうね。」
そんなことを言いながら、席に戻る後輩の後ろ姿を見ながらすみれちゃんのことを思い出す。

 

笑顔が素敵な子だったな、という印象がとても強い。仕事が出来て人気者だった彼女が語学留学するから退職すると発表したとき部署を超えて引き止めが入ったのも納得させる、感じの良い子だった。
お互い必要以上に踏み込んでコミュニケーションを取るタイプではないから知らなかったことも多いけど、久しぶりに会えるのはとても楽しみだった。

 

当日部署内女子はわたし含めて5人、そこにすみれちゃんが加わり6人の大所帯でおいしいレストランの片隅を陣取った。
乾杯もそこそこに、すみれちゃんは質問攻めにあっていた。少し照れつつも相変わらず感じの良い笑顔で、ロンドンで出会ったという台湾人のボーイフレンドについての質問を答えていた。


すこし席が離れていたし、ほかの子たちが矢継ぎ早に質問していたので、おいしい食べ物をつまみつつ、聞き役に徹する。なにより彼女の態度は恥ずかしそうだけどとても幸せそうで、見ているだけでこちらまで何となくうれしくなった。
おいしいステーキも食べれたし、すみれちゃんの元気な姿も見れてよかったなーなんてほろ酔い気分になったところで、会は終了した。

 

まだ時間も大丈夫だけど、今日はまっすぐ家に帰ろうと思って店を出たら、すみれちゃんが追いかけてきた。
「菜々子先輩、もしお時間まだ大丈夫でしたら、もう一軒いきませんか?」
「うん、大丈夫だよ。どこ行こうか?」
予想外のお誘いにちょっと驚きながらも彼女と近くのビストロに入った。

 

「誘ってくれてありがとう。すみれちゃん、人気者だからあまり話せなかったけど、元気そうな姿見れてよかったなって思ってた。」
「こちらこそお付き合いしてくれて、ありがとうございます。菜々子先輩となんだかもう少しお話したくて。」
「そうだったんだ。実は私もそう思ってたよ。どうしたの?」
「何か特にあったわけではないんです。ただ先輩に少し彼とのこと、話したくて。でも、あれだけすでに話したから迷惑かなって思ってたんですが、それでも…。」
「そうだったんだ。まぁあれは話してたというより質問攻めに精いっぱい答えてたって感じだったよね。話伺いましょう。」

 

すみれちゃんは彼と今の状況について話し始めた。
「彼と話したり、やりとりするのはとても楽しいですが、遠距離だし年齢の差も少し気になります。やはり将来自分の家庭を持ちたいと思いもあるんですが、でもそれはまだ学生の彼にとっては、リアリティがない話なのかもしれないなって思うと、少し考えてしまって。」

 

さっきのはにかんだ笑顔とは違い、彼女は本当に迷いがある表情をしていた。将来の身の振り方を考えざるを得ない微妙なお年頃だもんね、とつい過去の自分と重ねてしまう。
「そうなんだね。彼はイギリスにいるんだよね?」
はい、とうなづく声もは今にも消え入りそうな感じが漂っている。
「時差はあるけど、毎日やり取りもしてて、その時間は私にとって、とても満たされる大切な時間です。でもスカイプでもメッセージのやり取りでも終わった瞬間、違う世界に生きていることを思い知らされるというか…」
「それは毎回切なくなっちゃうよね。相手の生活がみえないと不安になるというか。」
「そうなんですよ。だから最近すこし連絡のやり取り自体が切なくなってしまうんです。話せば楽しいのはわかってるけど、そのあとの失望を味わいたくないなって感じてしまって。」
「でも、その中ですみれちゃんは彼のこと束縛しようとせず、すごいよね。それってなかなかできないことだと思うよ。」
一瞬、おどろいた顔をこちらに向けた。すぐに笑顔で、「そう言っていただけると嬉しいですが、そうですかね?」と聞いてきた。
「うん。そう思う。やっぱり人って不安になると、特に恋愛で不安になるとつい相手を縛って安心を得ようとするけど、すみれちゃんはそうしてないからすごいと思う。」
「そうですかねー。束縛したくなっちゃう気持ちもあるんですけど、それって実はすごく体力使う気がしてやめました。」
「そういうことはなかなかできないよ、自信もって。」

 

それでもすみれちゃんはどこか不安そうにうつむいている。
「でもまだひっかかってることもあるのね。」
「先輩、お見通しですね。こんなこと高校生みたいで恥ずかしいんですけど、彼の方が若いし、院生だからまわりに若くてかわいい女の子もいるんだろうなって思ったら結構悶々としちゃう部分もあるんです。そしてそんな自分も嫌だなって自己嫌悪に陥るというか。」
「そうなのね。それはつらいよね。でもあっちもその辺はおんなじ気持ちかもよ?むしろ私の予想だと、あっちの方が心配だと思うな。」
「あっちがですか?なんだか毎日忙しそうで、あんまり私のことなんて気にしてなさそうですけど…。」
「すみれちゃんの笑顔って本当に魅力的だから、すみれちゃんの周りには人がたくさん集まるでしょ?それって彼氏にしたらドキドキするんじゃないかな。」
ちょっとはにかんだ笑顔でありがとうございます、とすみれちゃんは言った。


「むしろ、またロンドン行っちゃえば、すみれちゃん。行く予定ないの?」
「実はワーキングホリデービザの抽選があるんですが、それに挑戦してみようかなって。そしたら2年イギリスに滞在できるんです。でも倍率がすごく高くて、どうなることやら。」
「大丈夫だよ、必要なら必ず手にすることができるはず。」
「菜々子先輩がそう言ってくださると力強いです、なんか元気でてきました。お腹も空いてきたので食べ物頼んでいいですか?」
素直なすみれちゃんをみていたら安心して、私もお腹がすいてきたから、食べてきたのにアヒージョやらパテやら頼みまくってしまった。

 

おいしいものを食べながら恋愛話を続ける。
「すみれちゃんの話を聞きながら思ってたんだけど、すみれちゃんは年齢差とか長遠距離のことは気にしてるけど、国の違いというか、国際恋愛してることはあまり意識してる感じがしてなくて、それがとてもいいよね。決して気にしてないとか、考えてないってことではないのは分かってるんだけど、変に力が入ってないというか。」
「実は私もそういう部分は、自分の中でも少し感じてました。台湾人と付き合ってるっていうと国際恋愛だね!って言われることが多いんですけど、言われるたびにそうだったって思い出す感じです。」
「いいと思うよ、とても難しい側面もあるんだけど、私の知ってる国際恋愛カップルでうまくいってる人たちって、たまにそのこくを忘れてる人たちっていうか、違うことを当たり前に受け止めてる感じがするから。すみれちゃんの話を聞いてるとそういう感じがするんだよね。」
「そうなんですか!うれしい。」
「だから余計なおせっかいとは分かってるけど、どうか大切にしてね、その感覚。」
「はい、そうします。なんか先輩誘って本当によかったです。心が軽くなりました。」
「私もすみれちゃんとたくさんお話出来てうれしかったよ。」
そのあと私たちは結局終電までたらふく食べて飲んで解散した。

 

「すみれちゃん、きっと未来はどうにでもなるから、その笑顔のまま突き進んでね。」
酔っぱらってちょっと恥ずかしいけど、心から思ってることを伝えた。すみれちゃんは満開の笑顔で頑張りまーすといいながら大きく手を振っていた。

 

その日から数か月過ぎたある日、すみれちゃんからメッセージが届いた。
「先輩、ビザが取れました。奇跡だと思います、でも先輩が大丈夫だって言ってたから大丈夫な気もしてました。」
本当に必要な人のところに届くのだな、と驚きと共に、これからもすみれちゃんはあの笑顔を武器に進んでいくんだろうなって、彼女の明るい将来を想像して私まで嬉しくなった。がんばってね、すみれちゃん、そのまま突き進め!と返信した。少しだけ先を生きている私からのメッセージが彼女の応援になるといいな、と思いながら。

つづく

 

 

原田明奈

千葉県出身アラサー女子

今作が小説家デビュー、前職はお皿洗いからパラリーガルまで幅広い。いろんなことにとりあえず首を突っ込んでみるチャレンジャー。

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