VIII Vaganova Prix 2018 - 第8回ワガノワ国際バレエ大会2018

02.11.2018

 

 グランプリ受賞者のミハエル・バーキディジャ Photos of Mikhail Barkidzija on the books 

(c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

VIII Vaganova Prix 2018 - 第8回ワガノワ国際バレエ大会2018

 

今年10月14日から20日の7日間、第8回ワガノワ国際バレエ大会が開かれ、今回、異例の許可で見学をすることができた。サンクトペテルブルグは別名「北のベニス」といわれ、美しい街として有名であるが、比較的天候が悪いことでも知られており、晴れている日が年間65日ほどだそうだ。しかしコンクールが行われた1週間は青空が広がり、10月中旬というのにそれほど寒さも感じられず過ごしやすかった。

 

 芸術監督、ジャンナ・アユポワ氏 (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 出場者たち (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

この大会はニコライ・ツィスカリーゼ氏が学校長として就任後、2016年から10年ぶりに再開された。元々は1988年にロシア文化省とアカデミーにより、ロシアバレエの素晴らしさを世界に広めるために始められた。今年も日本、英国を含め、世界18ケ国から63名のより優れたダンサーが集まった。

 

日本人、日系人では男子ジュニア部門、ワガノワ・バレエ・アカデミー在籍中の名田暢さん、女子シニア部門、同じくアカデミー在籍中の、加藤沙彩さん、高木風音さん、原和奏(わかな)さんの3人、男子シニアではこちらもアカデミー在籍3年目、最終学年の大澤ホロウィッツ有論(あろん)さん*、パリ国立高等音楽・ダンス学校からTaisei Jomenさんが参加され、英国人として唯一、グレイス・ライドさんが出場。グレイスさんはロンドンにあるナタリア・クレメンバレエスクール出身であり、去年からこのアカデミーに留学している。

 

*大会プログラムでは米国籍となっているが、米国生まれ、英国育ちの英米国籍。英国ロイヤル・バレエ・スクール、ホワイトロッジ卒業生。

 

 

出場者の現地入りと1次審査

 

14日、出場者がサンクトペテルブルグに到着。翌日15日、受け付けや基礎レッスン、そして1次審査で披露する振り付けを学ぶ。

16日は9時からダンサーたちは、1次審査に向けて各自黙々とウォーミングアップなどをし、学校内は緊張感が走る。10時頃からジュニアとシニア男子がペティパ・スタジオに集まり、10時半、審査委員がツィツカリーゼ氏に一人一人紹介され、1次審査が始まった。出場者の先生方やバレエ関係者と一緒に私もバルコニーから静かに見守る。

休む間もなく、次の審査が行われるスタジオへ移動。校内は迷ってしまうほど広く、同じ階に普通の授業を行う教室とバレエスタジオがある。ジュニア女子の審査はペティパ・スタジオよりも大きい7スタジオで12時半から見学。同じスタジオで15時半からはシニア女子の審査を見学。各部門ごとにバー、センター、そして前日に覚えた振り付けを一生懸命に思い出し踊っていた。男子部門は参加人数が少ないことからジュニアとシニアが混合で行われたため、テクニックなどの面で実力の差が見受けられたが、女子は、どこでどう点をつけるのかと悩むほど、素晴らしいダンサーばかりだった。その中で目に止まったのは、シニア女子部門で1位を取ったアナスタシア・スミノロワであった。彼女の赤毛も目立つことながら、安定感のある踊りと優雅さを同時に醸し出すダンサーだ。

 

 

 女子シニア部門1次審査 (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

男子シニア部門1次審査 (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

審査委員 (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

審査委員 (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

ー 審査員 ー

審査委員長:イリーナ・コルパコワ(アメリカン・バレエ・シアター、バレエ・ミストレス)

ジャンナ・アユポワ(ワガノワ・バレエ・アカデミー、芸術監督)

ジェイソン・ビーチー(ドレスデン・バルっか舞踊大学学長)

キャスリン・ブラッドニー(ローザンヌ国際バレエコンクール、CEO/芸術監督)

ジョ・ジュヒョン(韓国国立芸術大学教授、韓国国立総合芸術学校校長)

ミハイル・ラヴロフスキー(モスクワ舞踊アカデミー芸術監督)

牧阿佐美(新国立劇場バレエ研究所所長)

タデウス・マタチ(ジョン・クランコスクール校長)

 

 

 

1次審査通過者の発表はかなり遅くなってからされた。その間もアカデミーの生徒たちは休憩時間を削って、20日、マリインスキー劇場でのガラコンサートのリハーサルを夜遅くまで行なっていた。

 

ガラ・コンサートの練習風景 (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

ガラ・コンサートの練習風景 (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

 

1次通過者では日本人、及び日系人が数名、そしてイギリスからは唯一、一人が決勝に進出。

 

 

 ー 1次審査結果 ー

 

ジュニア部門 – 男子   *カッコ内は年齢と出身国

1.Mikhail Barkidzija (16 / Russia) 

2.Vladislav Bashmakov (16 / Russia) 

3. Yan Begishev (16 / Russia) 

6. Junsu Lee (16 / 韓国) 

11. Vladislav Khodasevich (16 / Belarus) 

 

ジュニア部門 – 女子 

12. Lizi Avsadjanishvilli (15 / Georgia) 

13.Yulia Bondareva (16 / Russia) 

16.Caitlin Zilca (15 / USA) 

19. Jordan Coutts (16 / USA) 

21. Seyeon Min (15 / 韓国) 

22. Victoria Mokrousova (16/ Russia) 

26. Yunsun Park (16/ 韓国) 

27. Grace Reid (16 / 英国)

28. Pinja Rissanen (14 / Finland) 

29. Joana Senra (16 / Portugal) 

 

シニア部門 – 男子 

34. Taisei Jomen (17 / 日本) 

37. Francisco Morais (18 / Portugal) 

38. 大澤ホロウィッツ 有論(18 / USA) 

39. Marats Sultanovs (17/ Latvia) 

40. Alexei Khamzin (17 / Russia) 

41. Danila Xamzin (17 / Russia) 

43. Marko Juusela (18 / Finland)

 

シニア部門 – 女子 

45. Valeria Bespalova (17 /Russia) 

47. Aviva-Gelfer Mundl (17 / USA) 

49. Anastasia Gorbacheva (17 / Russia) 

50. Sofia Degtyannikova (17 / Russia) 

52. 加藤沙彩 (17 / 日本) 

54. Maria Malinina (18 / Russia) 

56. Anastasia Smirnova (17 / Russia) 

57. 高木風音 (17 / 日本) 

60. Alexandra Khiteeva (17/ Russia)

 

 

17日は2019年新春に行われるローザンヌ国際バレエ大会出場権をかけた審査が行われた。

 

 

ファイナル審査

18日エルミタージュ劇場で行われたファイナル観覧チケット (c)J News UK, Photo:Chikako Osawa-Horowitz

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

18日、いよいよファイナル審査である。会場となったエルミタージュ劇場はエルミタージュ美術館に隣接し、規模は小さいが伝統がある重厚なデザインの劇場であった。ファイナルは2部構成で、2時間半の昼食時間が設けられていた。劇場内にもカフェはあったのだが、あえて美術館のカフェで昼食を取ることに。カフェの店員に片言のロシア語で注文するも、流暢な英語で返してくれた。

 

無謀にも現金を一切持たずにロンドンを飛び立った。幸い、想像以上に銀行カードやクレジットカードがどこでも使え、それほど不便はなかったが、市内のシティバンクではイギリス発行の銀行/クレジットカードでの現金引き出しはできなかった。また、イギリスを含む欧州の携帯電話も使用不可なため、長期滞在の場合は、現地のSIMカードを安く購入することをお勧めしたい。

 

26名の1次審査通過者は2つのソロバリエーションを披露。しばらくして結果が発表され、額入りの賞状が受賞者一人一人に手渡された。

 

結果は以下の通り。日系として一人、大澤ホロウィッツ 有論さんが観客賞を受賞。グランプリとジュニア男子部門1位のロシア人とアメリカ人のハーフであるミハエルさんとシニア男子部門1位のフィンランド出身のマルコさん、この3人は学校長であるツィツカリーゼ先生の直属の生徒であり、先生も大いに喜んでいらした。

 

 

 

ー ファイナル結果 ー

 

グランプリ
Mikhail Barkidjija (Russia)

 

ジュニア部門 – 男子
1 prize - Mikhail Barkidzija
2 prize - Junsu Lee (韓国)
3 prize -  Yan Begishev (Russia)

 

ジュニア部門 – 女子
1 prize - Seyeon Min (韓国)
2 prize - Yulia Bondareva (Russia)
3 prize - Lizi Avsadjanishvilli (Georgia)

 

シニア部門 – 男子
1 prize – Marko Juusela (Finland)
2 prize –  Danila Khamzin (Russia)
3 prize – Alexei Khamzin (Russia)

 

シニア部門 – 女子
1 prize – Anastasia Smirnova (Russia) and Alexandra Khiteeva (Russia)
2 prize – Aviva-Gelfer Mundl (USA)
3 prize – Anastasia Gorbatcheva (Russia)

 

Natalia Dudinskaya and Konstantin Sergeev 特別賞: 

Seyeon Min (韓国)

 

バレエ会社Grishko 特別賞:
Maria Malinina

 

観客賞:
大澤ホロウィッツ 有論 (USA) and Yulia Bondareva (Russia)

 

1年間ワガノワバレエアカデミーインターンシップ賞:
Marats Sultanovs (Latvia) and Joana Senra (Portugal)

 

ローザンヌ国際バレエ大会出場権賞:
Vladislav Khodasevich (Belarus),
Marats Sultanovs (Latvia),
Joana Senra (Portugal).

 

 

 

マリインスキー劇場でのガラ・コンサート

 グランプリ受賞者に送られるトロフィー (c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

ニコライ・ツィツカリーゼ学校長からグランプリ賞を受けるミカエルさん

(c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

最終日、20日。一幕では入賞者の発表が行われ、入賞者はそれぞれのバリエーションを1つづつを踊った。

グランプリとジュニア男子部門で優勝したミハエルさん(ニックネームはミーシャ)は手足の長さを武器に、しなやかに美しく舞い、観客からは拍手とため息が漏れた。日本人の母と英国/米国籍の父親を持つ大澤ホロウィッツ 有論(あろん)さんは、アクティオンを披露し、観客賞を受賞。彼のダイナミックなジャンプ力から観客は感嘆の声を出し、私の隣に座っていた年配のロシア人女性も英語で「グッド」と言いながらジャスチャーで親指を立てるほどであった

 

 

ー ガラ公演演目 ー

 

Joana Senra (ローザンヌ国際バレエ大会出場権)National Conservatory Dance School Lisbon

Saia Lusa

 

Lizi Avsadjanishvilli (ジュニア女子部門3位)Vaganova Ballet Academy

「Raymonda’s Variation from the I act of the ballet Raymonda

 

Yan Begishev(ジュニア男子部門3位)Vaganova Ballet Academy

「James’ variation from the I act of the ballet La Sylphide

 

Anastasia Gorbacheva(シニア女子部門3位)Vaganova Ballet Academy

「Medora’s variation from the ballet Le Corsaire

 

Aaron Osawa-Horowitz 大澤ホロウィッツ 有論(観客賞)Vaganova Ballet Academy

「Acteon’s variation from the ballet Esmeralda

 

Yulia Bondareva(ジュニア女子部門2位)Vaganova Ballet Academy

「Paquita’s Variation from the ballet Paquita

 

Danila Khamzin (ジュニア男子部門2位)Perm State Ballet School

「Jean de Brienne’s variation from the ballet Raymonda

 

Aviva-Gelfer Mundl (シニア女子部門2位)Vaganova Ballet Academy

「Diana’s variation from the ballet Esmeralda

 

Min Seyeon(ジュニアグループ部門1位)と Lee Junsu(ジュニアグループ部門2位)韓国 Seoul Arts High School

「Pas de deux Aurora and Desire from the ballet The Sleeping Beauty

 

Anastasia Smirnova(シニア女子部門1位)Vaganova Ballet Academy

「Gamzatti’s variation from the ballet La Bayadére

 

Marko Juusela(シニア男子部門1位)Vaganova Ballet Academy

「Prince’s variation from the ballet The nutcracker

 

Alexandra Khiteyeva(シニア女子部門1位)Vaganova Ballet Academy

「Flora’s variation from the ballet Le Reveil de Flore

 

Mikhail Barkidzija(グランプリとジュニア男子部門1位)Vaganova Ballet Academy

「Prince Siegfried’s variation from the ballet Swan Lake

 

アクティオンを踊り大澤ホロウィッツ 有論さんが観客賞を受賞

(c)Vaganova Prix, Photo:Andrew Lush

 

 

二幕ではワガノワの在学生および去年卒業した2人の生徒を加え、「Suite en Blanc(白の組曲)」を披露。

黒い背景に白と黒の衣装の生徒たちが幻想的に舞台の上に浮かび上がり、美しく可憐に舞った。そしてなんといっても、最大の見せ場は、去年アカデミーを卒業、現在はマリンスキー・バレエに入団したマリア・コレワである。可憐ながら安定感のある踊りを見せ、彼女の揺るぎない存在感を誇示した。そしてマリンスキー・バレエは今シーズンより彼女をファースト・ソリストに昇格。異例の速さの昇格となった。今後の彼女の活躍を期待したい。会場にいるバレエファンからは惜しみない歓声と拍手が起こり、しばらく鳴り止まなかった。

 

この1週間、出場者たちは朝から夜遅くまで緊張した状態で臨んでいたため、楽屋から出てきた時の表情は全てが終わりホッとしたような、やりきったような満遍の笑顔であった。

 

この模様はマリインスキーシアターからライブで全世界に配信されていた。

 

 

 

ワガノワ国際バレエ大会で受賞者が受け取ったブローチはジュエリー会社、House Sasonkoが製作したもので、19世紀、皇帝ニコライ2世より25年間ロシア王立バレエ団のソリストとアーチストに送られたブローチを復元して作った、特別な意味のあるものである。

 

受賞ブローチ (c)J News UK, Photo:Chikako Osawa-Horowitz

 

 

 

歴史

 

ワガノワ・バレエ・アカデミーは創立280周年を迎えた。

1738年、このアカデミーはロシア王立バレエ学校として設立。中でもアグリッピーナ・ワガノワのロシアモダンバレエへの貢献は素晴らしく、彼女によって確立されたワガノワ・メソッドというトレーニング法を生み出し、1957年より学校名は彼女にちなんで改名された。ワガノワ・メソッドはその独特の華麗でしなやかで美しく踊れるようになることで定評があり、そのトレーニング法が世界でも認められるのは、ニジンスキー、ヌレエフ、バリシニコフ、フジマートフ、ザハロワといった世界的有名なバレエダンサーを排出し続けていることからでも明らかである。

 

今でも毎年ロシア全土から10歳から19歳の子供たちが将来のバレエダンサーを目指し、オーディションにのぞむ。その競争率は65倍。そのほかにローザンヌ国際バレエ大会の入賞者など、世界中から入学希望者が断たない。現在約300名の生徒が在籍。

学校長は元ボリショイ・バレエ団の大スター、ニコライ・ツィツカリーゼ氏、芸術監督はジャンナ・アユポワ氏である、彼女は元マリインスキー・バレエ団のプリンシパルであり、ミハイロフスキー・バレエ団でバレエ講師をしていた。

 

入賞者贈呈品の1つに300ページにも及ぶアカデミーの歴史をまとめた本がある。歴代の偉業を成したバレエ講師や世界で活躍した卒業生の写真なども数多く載せられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本公演2019

 

ワガノワ・バレエア・カデミーは100人以上もの生徒を引き連れ、来年1月から2月にかけ、東京を皮切りに10都市、12公演を行う。演目はそれぞれの会場により異なるが、「くるみ割り人形」「パキータ」「人形の精」となっている。

 

 

 

 

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