連載小説:Every Story is a Love Story 第15話 (Only Japanese)

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持つべきものは年上の女友達2 美紀の場合 下

日曜日、ピカデリーサーカスのバークレイ銀行の前で待ち合わせ。少し早めに着いたから、なんとなく人の流れを見つめる。この場所には本当にたくさんの人がいるんだな、世界って広い!そんなことを思っていたら、あっという間に絢子さんと裕子がそれぞれやって来た。

今日はどうしても食べたいものがあるの!!という絢子さんの熱意に連れられてやってきたのは、歩いてすぐのチャイナタウンだ。 「ディムサム食べたい。ディムサム。人数多いとたくさん食べられるでしょ?」 ディムサムってなんだろうか、と思って二人の後ろについていったら判明した、飲茶のことだったのだ。

絢子さんは手馴れたように、たくさんオーダーしていく。英語と漢字が書かれたメニューを見ていると、どっちの言葉で料理を理解しているか分からないけど、確かに何の料理かは想像できる。

たくさんのディムサムがテーブルの上にどんどん広げられていく。

女三人でどんどんと平らげていく。 チャーシューまんをほおばっている時に絢子さんが突然聞いていた。

「美紀ちゃんそういえば男にふられてロンドンに来たんだっけ?何があった。」 「んー。その人と結婚するつもりだったんですよ。3年つきあってたしね。でもいつの頃からかケンカしかしてなかったし、挙句の果てには会話すらなくなってたんですけど、でも別れるとかまったく考えてなくて。そんな状態でも結婚すると思ってたんです。」 「それで?」 「でも彼からある日、突然別れを切り出されたんです。これだけずっと一緒にいてどういうこと?って」 「美紀からロンドンに行くから会おうって連絡が来たとき、びっくりしたんだけど、なんかテンションがいつもと違うから少し驚いたんだよね。でもそんな真剣な相手だったのに、突然別れを切り出されたってちょっと悲しすぎるよね。」 「でもわたしロンドンに来て、ちょっと気づいてしまったんですけど…。多分あまりにも結婚することに目がいってしまってて、あんまりタクヤのこと見てなかった気がするんですよねぇ。」 「あー美紀ちゃん気がついちゃった、それ。」 「そうなんです。ロンドンに来てから、最初は裕子がいるから助けてもらおうとか、自分の旅行なのに人任せの受動的な自分がいたんですけど、絢子さんとか裕子の能動的なアクティブさを目の当たりにして少し目が覚めた気がします。」 「美紀ちゃん、最初はなんでも裕子ちゃんのあとについていってる子だと思ってたけど、仕事強引に任せたらとても有能だったし、自分から動いてくれるようになったよね。」 「いやー絢子さんも裕子もとってもアクティブで目まぐるしく動いていたから、つられたんです。」 「ははは、たしかに絢子さんのペースはすごいよね。」 「だからお手伝い終わったあと、自分ではじめて劇場に行ってみたんです。そしたらすごく楽しかった。シンプルに自分のやりたいことをやったのって何時以来かなって思ったし。」

二人ともディムサムを食べながらも、ちゃんと話を聞いてくれている。

「なんかそういう日々の中で、私は自分の年齢とかなんとなく結婚したら、大人として立派だからとか、自分で考えることをいつの間にか止めてたんだと思う。だからタクヤの心離れても気がつかなかったし、なにより私もタクヤから心離れていたんだよなって思って。ロンドン来ていろんな人が本当にたくさんいるけど、やっぱり自分の意思でなにか行動してる人って、たくましいしかっこいいから、私もそうなりたいって思いました。」 「なんか美紀、一皮剥けたね。」 「いやーでも来週日本に帰るから怖いよー。やっぱり」 「どうして怖いの、美紀ちゃん?」 「だって、職探し一から始めないといけないし、友達はみんな彼氏いたり、結婚したり、妊娠したり、家建てるとかまでいくと、もう別世界って感じで、自分が何もないなって思って。もう27なのに。」 「はいちょっとまったー。まだ27でしょ。これからじゃない。本当に日本の女の子だけだよ、自分の年齢のあとに『なのに』ってつけるの。」 「美紀、絢子さんのスイッチいれたからね、これ。」 「スイッチ?」 「本当にね、27なんてまだ若いから、全然若いから。いくらでもなんでもできるんだから。私、こっち来たの30過ぎてからだけど、いける。まだまだ全然いける。」 「絢子さんかっこいい。」 「こんなセリフでかっこいいなんていってちゃダメよ。確かに女性だと自分の体のこともあるからね。でもやっぱり今、自分が何を望んでいるかじゃないのかな。」 「そうですね。うん、その通りだ。」 「必殺仕事人、絢子さん、またここに一人自分の意思の大切さに気がついた女子を一人作り出しましたね。」 裕子が大笑いしながらそんなことを言うから、私も噴出してしまった。

そのあともディムサムをたらふく食べて、カフェに移動しても、ひたすらにしゃべり続けた。女三人集まれば姦しいのだ。 その後、帰国する前に3人で会うことは叶わなかったけれど、私はロンドンで自分の行きたい場所に行ったり、食べたいものを食べたり、目一杯楽しんだ。そして裕子と絢子さん、それぞれから日本に帰ったときは、寿司としゃぶしゃぶを食べに行こうと連絡がきた。絢子さんはもう一言書いてあった。

『美紀ちゃんはこれからだ!やりたいことやってね。』

やっぱり絢子さんにはパワーがある。日本に帰ったらまず、英会話コースに通うことをその一言で決めることができた。失恋してロンドンに行ってよかった。そんなことを思いながら、飛行機の外から小さくなるロンドンを眺めていた。

つづく

前回のお話

原田明奈

千葉県出身アラサー女子

今作が小説家デビュー、前職はお皿洗いからパラリーガルまで幅広い。いろんなことにとりあえず首を突っ込んでみるチャレンジャー。

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