連載小説:Every Story is a Love Story 第16話 (Only Japanese)

21.01.2019

16

レイの場合3

 

 

 

 

 「レイちゃん、あの頃からずっと落ち着いたよね」という言葉をこの1年、何度もいろんな人から言われてきた。この2年間、そう、リチャードとの再会からもう2年経ったのだ。この間、あまりにいろんなことがあって、でもきっとベースにはずっと寂しさがあったのだと思う。


1度目の再会からちょうど1年後、もう一回リチャードと再会した。1度目と2度目の間、かなり頻繁にやり取りを私たちは取り続けた。それが支えだったし、でも日々寂しさは募ってしまって、会いにいってしまったのだ。
 

2回目の再会の最後、あの時ほど自分とリチャードが違う国に生まれたという運命に憤りを感じたことはなかった。でもそれ以上に、私達はお互い、自分自身に向き合って戦わないといけないことを痛いほど感じたのだ。それほど私達は葉お互いの心の中に入り込んでしまっていた。だから帰国してから私は彼に連絡を取ることができなくなってしまった。リチャードからもまた連絡がくることもなく、SNSから遠ざかった。


ロンドンに行くために仕事をやめていた私は、就職活動からはじめたけれど、思ったより全然決まらず、派遣で一般企業で働いたり、なんとなくざわざわする日々を2,3ヶ月続けた。どんどん心がすさんでいき、家と仕事の往復で、リチャードどころか友達とも話すことが億劫になっていた。わりとどん底まで落ちたのか、そこから配給会社時代の友達の紹介で海外の芸術団体の日本支部の仕事を得たのだった。

 

話をもらってから考える暇もなくその仕事をやると即答し、働くための準備を開始していたときに、ふとある会話を思い出した。
 

「レイはアートカウンシルとかそういう団体が向いてると俺はおもうんだけど」という無責任な発言だった。でも結局、そんな仕事を得て、とても喜んでる自分がいて、だからこそリチャードにだけはこのことを伝えなくては、と帰国してから初めて彼に連絡しようかと試みた。でも、直接テキストを送ることは、言葉通り、手が震えてできない。だから久しぶりにFacebookにこんなところで働きますと載せた。イイねくらいついたらいいなと思ったけれど、リチャードはおめでとうというコメントを残してくれていた。

 

実に半年ぶりのコンタクトであった。だからといってリチャードと直接やり取りをするわけでもなく、日常は忙しく過ぎていく。仕事は楽しく、自分でもびっくりしたけれど想定外にも恋もした。きっともうリチャードよりかっこよくて好きになれる人なんていないのかもしれない、っという思いは木っ端微塵に吹き飛んだ。何度も心の中のリチャードに、私、あっち行っちゃうからね、と問いかけたけど、現実には私達の間に何も起きなかった。新しい恋はこれまたあっさり終ったけれど、仕事は相変わらず楽しく日々を忙しく過ごしていく。
 

この時期、会う人ほとんどに「レイちゃんは落ち着いたね。リチャードのこと吹っ切れてよかったよ。」と言われ続けた。余りにもたくさん言われたのでそんなにやばかったの私は、と聞いたら、それぞれに私のやばかったエピソードを聞かされて、その度に恥ずかしくなったものである。それでもどこか、私はリチャードを吹っ切れている自分という存在に懐疑的だった。だから久しぶりにすーちゃんに会って思い切って聞いてみたのだ、私、落ち着いた?って。
 

「そうだね、リチャードとの関係を知ってたから新しい彼氏がでいたって聞いてうれしかったけど、あっさり別れて落ち込んでない姿はなんかむしろ心配になったよ。」
「そうだったの?」
「うん、なんかね。リチャードのことを引きづってるというよりも、やっぱりリチャードとの環境の違いとかどうしようもなさから、恋愛自体あきらめてるのかなって感じてた。」
やはりすーちゃんは鋭かった。思わずうつむいた私に、すーちゃんは他の友達は言わなかったことをやさしく話してくれた。


「でもレイちゃん、この2年を見てて、二人の関係に名前がつかなくても、うまく他の人に説明できなくても、リチャードとの関係自体あきらめなくていいんじゃないかな。ずっとどんなときもリチャードを大切に思ってきたことは、私は知ってるし、きっとリチャードだって変わらないんじゃない、二人を知ってる人間としてそんなことを感じるよ。あーもう泣かないで、チョコレートケーキに鼻水たらさないで、お願い!」
どんなときでも食欲に勝てない私達らしい発言で心から大笑いすることができた。

 

仕事が忙しいまま秋は過ぎて、いつの間にか2回目の再会からも1年が経っていた。年末も近づいてくると仕事プラス忘年会で1日が24時間では足りない気がしていたけれど、それでも楽しく日々を過ごしていく。思ったより早く終った飲み会の帰り道に、ふとコーヒーが飲みたくなって近くのカフェに入った。クリスマスソングが流れてて周りはカップルだらけで初めてその瞬間その日がクリスマスだと気がついた。そのとき思い出したのは、リチャードだった。
 

突如彼に何か伝えたくなった。こんな時期にあなたを思い出したよって、だからハッピーホリデーとメッセージをあっさり送ることができた。さあ、カップルだらけのカフェからさっさと帰ろうと店を出た瞬間携帯が震えた。キミもねxxxというシンプルなメッセージ。私達はやっとここまで来たんだね、って9000km離れてるけどそんな気持ちを共有できたのかもしてない。


私達の人生は、これからまた交わることがあるのだろうか。それは分からない。だけど、未来はこれからできっとまた会える日が来る。その予感だけで今は十分なのかもしれない。

 

つづく

 

 

前回のお話

 

 

原田明奈

千葉県出身アラサー女子

今作が小説家デビュー、前職はお皿洗いからパラリーガルまで幅広い。いろんなことにとりあえず首を突っ込んでみるチャレンジャー。

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