英国ロイヤル・バレエ団/英国ロイヤル・バレエ・スクール - ロイヤル・オペラ・ハウス公演 -2019年2月-

17.02.2019

The Two Pigeons. Alexander Campbell and Yasmine Naghdi.

©ROH, 2019. Photographed by Tristram Kenton

 

 

英国ロイヤル・バレエ団/英国ロイヤル・バレエ・スクール、ロイヤル・オペラ・ハウス公演

Royal Ballet School & Royal Ballet Collaboration Performance/ Double Bill at Royal Opera House

 

 

2019年2月12日

「英国ロイヤル・バレエ・スクールと英国ロイヤル・バレエ団のコラボ」公演

‘The Cunning Little Vixen’(イタズラ小狐)

振付:リアム・スカーレット

出演:英国ロイヤル・バレエ・スクール生徒

 

‘The Two Pigeons’(二羽の鳩)

振付:フレデリック・アシュトン

出演:ヤスミン・ナグディ、アレキサンダー・キャンベル、エリザベス・マクゴリアン、金子扶生、バレンティノ・ズッチーティ、アクリ瑠嘉

 

 

2019年2月13日

「ダブル・ビル バレエ演目」公演

‘Asphodel Meadows’ (アスフォデル・メドウ)

振付;リアム・スカーレット

出演:マリネラ・ヌネス、ローラ・モレラ、メーガン・グレイス・ヒンキス、平野亮一、マシュー・ボール、アクリ瑠嘉、カツラチサト、中尾太亮(たいすけ)他

 

‘The Two Pigeons’ (二羽の鳩)振付:フレデリック・アシュトン

出演:高田茜、ジェームス・ヘイ、クリスティン・マクナリー、マヤラ・マギリ、バレンティーノ・ズッチーティ、アクリ瑠嘉

 

 

両日共に英国ロイヤル・バレエ団が誇る二人の振付師が手がけたダブルバレエ演目がロイヤルオペラハウスで公演された。世界を代表する振付師の一人であるフレデリック・アシュトン氏と将来有望の若手振付師のリアム・スカーレット氏の作品。

 

Liam Scarlett's The Cunning Little Vixen. 雌キツネ役のマディソン・ベイリーと雄キツネ役のリアム・ボスウェル

©ROH, 2019. Photographed by Tristram Kenton

 

 

 

リアム・スカーレット氏は才能の溢れる若き英国人振付師である。彼の振付師としてのデビュー以来、英国ロイヤル・バレエ団のみならず、彼の出身校でもあるロイヤル・バレエ・スクール(アッパースククール、ロアースクール)にもオリジナルの振り付けを提供している。毎年夏にバレエ学校の公演には彼の振り付けが大いに起用されている。しかし今回のようにプロと肩を並べて生徒がコベントガーデンの舞台に立つことは初の試みであろう。

 

また、この作品はチャールズ皇太子の70歳の誕生記念して作られ、当日、皇太子もボックス席からご覧になっていた。

 

振付師の意向を表現することに、ある程度慣れているプロダンサーと違い、まだ、完全に舞台慣れしきれていない10代の生徒との共同作業は、リアム氏にとってもチャレンジであり、また彼の高い理想を、生徒各自が自分の現存するバレエ技術を超越し、どこまで表現者として踊れるか。それは過酷な挑戦であろう。しかし、この挑戦は生徒にとってもリアム氏自身にとっても多くの学びをもたらし、総合芸術バレエの向上に繋がっているに違いない。

 

この‘The Cunning Little Vixen’(イタズラ小狐)は1921年ごろ、現在のチェコ共和国のオペラとして生まれた。まるで童話の絵本を見るように、本をめくるシーンが舞台バックの大型スクリーンに映し出される。舞台セットは、ほぼスクーンのみで、映像を効果的に使用していた。主人公の雌キツネ役のマディソン・ベイリー氏は、現在アッパースクールの最終学年に在籍している。彼女のしなやかな踊り、また生徒とは思えない素晴らしい表現力は観客を魅了した。さすがロイヤル・バレエ・スクールで全8年間のトレーニングをし、最終学年で主役を勝ち取る実力の持ち主である。彼女が11歳でロイヤル・バレエ・スクールに入学した頃からずっと彼女を観てきてるが、常に彼女はクラスでもトップダンサーであった。卒業後の彼女の活躍が益々楽しみである。

 

Liam Scarlett's The Cunning Little Vixen. カエル役の五十嵐大地

©ROH, 2019. Photographed by Tristram Kenton

 

 

そして、ユースアメリカグランプリで優勝し、ロイヤル・バレエ・スクールに入学した五十嵐大地氏は、重要なカエル役で登場。今年で同校在学が4年目になり、ますます彼の存在は大きくクローズアップされてきている。学生生活もあと2年を残すのみ。ロイヤルの歴史に残るような日本人ダンサーに育つことを願うばかりだ。

 

この作品はストーリー性の高さ、テンポのある話の展開が特徴で、ユーモアを含んだ作品に仕上げられ、40分の舞台はあっという間に終わった。バレエファンのみならず、クラシックバレエに少し飽きてしまった人やバレエ初心者、小さい子供たちにも楽しめるバレエ演目である。

 

是非とも定期的に公演して頂きたい演目の1つであり、きっと日本のファンもライブシネマなどで観てみたいと思うに違いない。

Liam Scarlett's The Cunning Little Vixen. 雌キツネ役のマディソン・ベイリーと雄キツネ役のリアム・ボスウェル

©ROH, 2019. Photographed by Tristram Kenton

 

 

翌日、13日は、全く雰囲気の違うリアム氏の作品を観ることになった。‘Asphodel Meadows’ (アスフォデル・メドウ)は、2010年に作られた、哀愁を帯びたクラシカルなスタイルの作品で、2011年には英国ナショナル・ダンス・アワードでベスト振り付け賞を受賞した。今シーズン、その作品が再びオペラ・ハウスに戻ってきた。

 

‘Asphodel Meadows’ (アスフォデル・メドウ)は古代ギリシャ神話では、人間が死を迎えた時に、普通の魂が行くとされている世界のことである。フランスの作曲家、プーランク氏のコンチェルトを2台のピアノが美しく弾き語り、観客をまるで異次元に導いていく。舞台バックの墨絵のような絵も印象的で、黒を基調とした舞台装置の動きと照明、そして繊細で、しなやかなダンサーの動きとコンチェルトが一つとなり、美しくも物悲しい黄泉の世界を作り出していた。

 

Asphodel Meadows. ©ROH, 2019. Photographed by Bill Cooper. 

 

 

 

フレデリック・アシュトン氏はケネス・マクミラン氏と並び、イギリスを代表する振付師であり、彼らは、ロイヤル・バレエを始め、世界のバレエ界に偉大な影響を与えた。アシュトン氏は、現在でも英国内のダンススクールとして名門である、ランバート(ランベート)スクールにて本格的にバレエを当時、習った。この創立者であるマリー・ランバート(ランベート)氏はユダヤ系ポーランド人で、ロシア帝国バレエで活躍したヴァーツラフ・ニジンスキー氏の振り付け助手として才能を認められた女性であった。また、彼はユダヤ系ロシア人のイダ・ルビンシュタイン氏が主宰するパリのバレエ団でも学び、フランスとロシアのバレエや文化から大きな影響を受けた。

 

The Two Pigeons. Alexander Campbell and Yasmine Naghdi.

©ROH, 2019. Photographed by Tristram Kenton

 

 

 

「二羽の鳩」は元々、1886年にパリオペラ座で公演され、それを1961年にアシュトン氏が全2幕に変え振り付けと演出を行った。

 

連日、異なるキャストで「二羽の鳩」を鑑賞することになった。12日は、両者ともにロイヤル・バレエ・スクール出身のプリンシパル、ヤスミン・ナグディ氏とアレキサンダー・キャンベル氏が出演。若い女性役の振り付けは、鳩の動きを取り入れたものであり、ヤスミン氏の動きがやけに滑稽に表現され、観客から笑いを誘いはしたが、全体的に安定した踊りで見事にこの役のデビューを果たした。

 

そしてこの日、プリンシパルよりも舞台で輝いたのはジプシー役のソリスト、金子扶生(ふみ)氏ではなかっただろうか。彼女が醸し出す艶かしい演技と踊りが観客の目を釘付けにし、その存在感を十分に披露した。著者の隣のポッシュなイギリス人ご婦人も私の耳元で、「彼女はまだソリストなの?!本当に素晴らしいダンサーだわ。」と囁いたほどだった。こんな魅惑的な女性に誘惑されたら、きっとどの男性も彼女について行ってしまうだろう。

 

翌日は若い女性役に、プリンシパルの高田茜氏、若い男性にソリストのジェイムズ・ヘイ氏、ジプシー役にマヤラ・マクナリー氏という配役であった。高田氏は本当にアシュトンが求めている役柄の女性像を忠実に表現していたのではないだろうか。か細い体と長く美しい手足は、どこか頼りなく弱々しいながらも芯の強さをよく表現していた。鳩の動きはヤスミン氏の少々滑稽な表現とは異なり、彼女はコケティッシュで、愛らしい踊りを魅せた。彼女を捨てて、ジプシー女性にそそのかされた愚かな男性役のジェイムズ氏に嫌悪感を頂くほど、彼女は多くの観客の心をがっちり掴んだであろう。

 

また、本物の二羽の白い鳩を演出として使い、ラストシーンで、二羽の鳩と愛し合うカップルが寄り添う演出は、ベタと思われがちだが、このアシュトンのバレエではロマンチックな完璧なエンディングである。

 

The Two Pigeons. Alexander Campbell and Yasmine Naghdi.

©ROH, 2019. Photographed by Tristram Kenton

 

 

The Two Pigeons. Alexander Campbell and Yasmine Naghdi.

©ROH, 2019. Photographed by Tristram Kenton

 

 

The Two Pigeons. Alexander Campbell and Yasmine Naghdi.

©ROH, 2019. Photographed by Tristram Kenton

 

 

 

 

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

Copyright © 2017 J News UK 2017