梅田芸術劇場とチャリング・クロス劇場 日英共同プロジェクト - 藤田俊太郎演出、ミュージカル『VIOLET(ヴァイオレット)』

Musical ‘Violet’ directed by Shuntaro Fujita at the Charing Cross Theatre

梅田芸術劇場とチャリング・クロス劇場 日英共同プロジェクト - 藤田俊太郎演出、ミュージカル『VIOLET(ヴァイオレット)』

(C) 2019 Charing Cross Theatre. 'Violet' Photo Scott Rylander

梅田芸術劇場とチャリング・クロス劇場のコラボレーション企画として、チャリング・クロス駅の真下にあるアーケード内の劇場で、日本人演出家、藤田俊太郎氏のミュージカルが今年1月14日から4月6日まで上演された。藤田氏は「世界のニナガワ」と評される蜷川幸雄氏に海外公演も含め、10年以上携わってきただけに、舞台自体は小規模でありながら、自らの才能をフルに発揮し素晴らしいものを披露してくれた。

ミュージカル『Violet(ヴァイオレット)』は一言で言えば、見ごたえのあるミュージカルであった。1997年にニューヨークで初演された『Violet』は数々の賞を受賞したミュージカルであり、ドリス・ベッツ氏の『The Ugliset Pilgrim』の短編を元に作られている。そして多くのミュージカル音楽を手がけているジェニー・テソリ氏と脚本・歌詞を担当したブライアン・クロウリー氏によって質の高い作品に仕上がっている。

チャリング・クロス劇場は、まず、チャーミングな作りになっていることが特徴。小劇場というものの1階はバー、その奥はソファなどくつろげるスペースがあり、地下1階から劇場に入るようになっている。舞台は360度回転式の円状の舞台を中心に四方に合計250の客席がある。舞台セットも椅子とシルバーのケースのみを使い、シンプルで、機能的な作りになっていた。

特に注目は、少女時代の「バイオレット」役を演じた子役の歌唱力の素晴らしさだった。見た目の可愛らしさに、大人顔負けのその澄んで遠くまで響く美しい歌声。もちろん、主役の「ヴァイオレット」を始め、他の役者の歌唱力は、期待以上であった。著者も以前、アメリカに10年ほど住んでいたことがあったため、南部独特のバンジョーの響き、カントリーミュージック、絶妙な南部訛りの英語、そして唱導者とゴスペル隊との兼ね合いをとても懐かしく感じた。

テーマは、人種差別、人権を扱っており、「他人と違う自分」がどのような扱いを周りから受け、どのように生きていくか、また「子供の時に受けた傷がどのように大人になってからも影響するか」を描いている。60年代、アメリカのノースカロライナで生まれ、育った『ヴァイオレット』という名の女性が主人公のストーリー。13歳の時に彼女は不幸にも、父親の使用していた斧を顔面に受け、酷い傷を一生負うことになる。人々は彼女を醜いと差別し、彼女自身ももしかしたら父親はわざと自分にこんな酷い傷を負わせたのではないか、という疑いを持ちながら大人になっていく。たまたまテレビで放送された、奇跡を起こせる唱導者に自分の顔の傷を治してもらおうと、父親の死後、一人でその唱導者に会うため1500kmも離れたオクラホマ州トーサに長距離バスで向かう。その間、二人の軍人に出会う。そのうちの一人、黒人のフリックは、生まれながらにして人種差別を受け、人権も無視され生きていた。その過酷な現実に彼女は共感し、お互いを次第に理解しようとしていく。結局奇跡を起こせる唱導者には会えるが、自分が求めている外見の美しさを手に入れられず、絶望を感じる。しかし外見の美しさよりもそれ以上に大切なものはないかを心優しいフリックに教えられ、彼女は救われる。

この繊細な60年代のアメリカ中南部のストーリーを日本人が演出した事に正直驚いた。日本人にはあまり馴染みがないかもしれないが、ヨーロッパからアメリカ大陸へ移民が住みつくと共に労働力ための奴隷として多くの黒人がアフリカから連れてこられた歴史がある。のちに奴隷となって連れてこられた黒人の子孫たちがアメリカに定住し、以前より彼らの人権は守られてるようになっているとはいえ、奴隷制度がなくなった現在でも黒人への差別は非常に根強く残っている。

また、子供心に受けた外傷や心の傷は、大人になっても潜在意識の中に存在し、気がつかないうちに自らの価値観、思考などに影響を与えているということも大事なメッセージかもしれない。

尚、様々な意見がこちら現地ではあるものの、1時間50分の休憩なしの舞台は、ストーリーに集中できるため、効果的であったと感じた。

Kaisa Hammarlund as Violet

(C) 2019 Charing Cross Theatre. 'Violet' Photo Scott Rylander

Keiron Crook as Father, Rebecca Nardin as Young Violet, Kaisa Hammarlund as Violet

(C) 2019 Charing Cross Theatre. 'Violet' Photo Scott Rylander

Janet Mooney as Old Lady, Rebecca Nardin as Young Violet, Kaisa Hammarlund as Violet

(C) 2019 Charing Cross Theatre. 'Violet' Photo Scott Rylander

Keiron Crook as Father, Rebecca Nardin as Young Violet

(C) 2019 Charing Cross Theatre. 'Violet' Photo Scott Rylander

Angelica Allen as Musical Hall Singer

(C) 2019 Charing Cross Theatre. 'Violet' Photo Scott Rylander

Kenneth Avery Clark as Preacher

(C) 2019 Charing Cross Theatre. 'Violet' Photo Scott Rylander

Kaisa Hammarlund as Violet (C) 2019 Charing Cross Theatre. 'Violet' Photo Scott Rylander

藤田俊太郎:

1980年生まれ、秋田県出身。東京芸大美術学部先端芸術表現科卒。

2004年東京藝術大学美術学部先端芸術表現科在学中にニナガワ・スタジオに入る。俳優として活動後、2005年から2016年まで蜷川幸雄作品に演出助手として関わる。演出を手掛けた舞台には、2011年「喜劇一幕・虹艶聖夜」、2012年「話してくれ、雨のように……」、2016年ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」などがある。また、絵本ロックバンド「虹艶Bunny」としてライヴ活動も行う。2015年「ザ・ビューティフル・ゲーム」で第22回読売演劇大賞の杉村春子賞と優秀演出家賞を、2017年「ジャージー・ボーイズ」で第24回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。

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