自力整体ナビゲーターの矢上真理恵氏 (C)矢上予防医学研究所
日本発祥!矢上予防医学研究所の自力整体をロンドンで体験
Self Healing Technique by Yagami Medical Institute in Japan
「自力整体」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「自力整体」とは、矢上予防医学研究所の所長、矢上裕氏が考案した全く新しいタイプの整体である。これは整体の他にヨガ、鍼灸、瞑想の要素が取り入れられている。普通の整体とは異なり、「自力整体」はその名の通り、他人に治療してもらうのではなく、自らの体の不調を自らが見つけ、治すというものである。
考案者の矢上氏の長女、真理恵氏は現在ロンドンにて自力整体の講師をされている。幼い頃から父親の影響でヨガ、瞑想にも精通しており、23歳から助手として活動し、矢上氏の執筆している本のモデルにもなっている。考案者の矢上氏はこれまでに25冊以上の本を出版している。
また、日本には約500名、海外には2名の自力整体を教える資格を持つ講師がおり、講師は毎年技術の向上のため、本部にて講習を受けることが義務付けられているなど、各講師の質の高さでも有名である。
18歳で日本を離れ、16年間の海外生活にピリオドを打ち、突然、4月に帰国を決めた、真理恵氏にその心境のたずねてみた。
インタビューに応じる矢上真理恵氏 (C)J News UK
J:本日はお忙しい中、取材に応じて頂きありがとうございます。
M:こちらこそ、ありがとうございます。
J:自力整体とはどんなものか教えて頂けますか?
M:自力整体は、慢性的な不調の改善&予防に良い、自分で自分を元気にするセルフケア健康法です。自力整体を実践する事で、体からのメッセージを聴き、自律神経を整えながら根本から痛みのない体に変えていきます。
自力整体の技術は東洋医学の指圧や日本の整体技術をベースに全く新しい方法を使って考案されました。一番の特徴は人にしてもらう治療ではなく、自分自身で行うことです。具体的には東洋医学の基本的な考え方である気(生命エネルギー)を増やし、全身に廻らせるという目的でいろいろな指圧をしたり、関節がさびないように、関節の可動範囲を広げる動きをしています。指導者の指示によりある形を全員が完成させるヨガなどと異なり、指導者はいるものの、自力整体の動きの流れを誘導するだけで、生徒自身が自分の身体を点検し、自分のこっている場所を探して、そこを自由にマッサージするという流れになっています。
J:海外在住するきっかけは?
M:舞台美術と英語を学ぶためです。普通に日本の大学に進学すると思っていたのですが、進路をよく考えていくうちに、英語を学ぶには英文科に行くべきであり、専門知識を学ぶならその専門の大学へ行くべきなのですが、私は英語も専門分野も両方同時に学びたく思い、高校卒業後直ぐにアメリカの大学に留学することに決めました。
しかもアメリカの大学は専門知識を学べるだけでなく、教養課程として自分の専門とは異なる教科も受講できたり、他の大学への編入がし易かったり、専攻も変えやすい事や、ミュージカルなど舞台が盛んなニューヨークを選びました。といっても、すぐにニューヨークに行ったのではなく、バージニア州、カリフォルニア州サンフランシスコの大学の編入を経て、最終的にニューヨークに落ち着きました。
J:海外在住は何年になりますか?
M:16年です。
J:ニューヨークからロンドンに来た理由は?
M:ロンドンならではの独特の舞台の魅力があり、アメリカだけではなく、もっと他の文化にも触れてみたいと思っていました。ニューヨーク留学を終え、日本に帰り1週間で実はイギリスのワーキングホリデービザが当たったんです!その半年後にはロンドンに来ていました。
渡英した当初は、友達も知り合いもいなかったため苦労しましたが、でもどうにか衣装のアシスタントの仕事や、自分のプロジェクトができるチャンスを得ました。そのビザが2年で切れる頃、演出家から言われた通りの衣装を作るより、自ら全てを考え、作り出したいという強い思いがこみ上げてきて、セント・マーチンの大学院でパフォーマンスデザインを学ぶことに決めました。ただ、そこではそれまでのように衣装デザインではなく、舞台制作を学ぶコースでした。もちろん、衣装も作れますが、脚本を書いても、演出をしても何でも自分が好きなようにやって良いというものです。
1年目はお互いに違うことを担当している生徒とコラボレーションで1つの作品を作り、2年目は自分の好きなものを好きなように作品にします。そんな毎日忙しくしている中で、どういうわけか、うつ病になってしまって、周りの友人の薦めで、カウンセリングに通うことになりました。その時に、「インナーチャイルド」という言葉を知ったのですが、それにとても興味を持ち始めました。というもの、今の自分の状況が、20年前の自分が小さい頃に体験した事と繋がっていたからです。
私が10歳の時に阪神淡路大震災を経験し、たまたま私は助かりましたが、急いで自宅に帰ると、家は崩れ、近所は本当に酷い状況でした。母と妹は家にいたはずなので、その惨状を見て、勝手に二人は死んでしまったと思いました。でも悲しみが込み上げるかわりに、完全に自分の感情はシャットダウンし、さぁ、これからしっかり生きていかなければ、と逆に感じました。結局避難場所で二人に再会し、家族は全員無事でしたが、その時から自分の感情を表に出せなくなっていました。気がつかないうちにこの感情を長年自分の中に溜め込んできていたんでしょうね。それがうつ病として表に出て、やっと自分の中で何が起こっていたのかを理解できました。大学院の2年生の時では、それをテーマにダンスパフォーマンスを作りました。『Little Girl Inside Me』という作品で、大人の自分と子供の自分がいて、檻の中の子供の自分は自分の心を表し、今の大人の自分と対話するという内容のダンスでした。
自力整体ナビゲーターの矢上真理恵氏 (C)J News UK
J:現在自力整体の講師(ナビゲーター)として活躍されていますが、ニューヨークの大学で舞台美術を学び、ロンドンの大学院で舞台制作を学びましたが、自力整体のナビゲーターになられたのはどのような経緯でしたか?
M:元々舞台衣装をやりたいっと思ったのも人間の身体に興味があったからだと思います。ニューヨークは活気に溢れ、とても刺激的な街ですが、それだけストレスも多く、自分でも気がつかないうちに心身ともにかなり疲労していました。そこで初めて自分自身で自力整体を今まで以上に真剣に始めた時に、「これは、自分だけではなく、他の人にも効くのではないか?!」と思い、一度帰国し、講師のライセンスを取り、またニューヨークに戻って日本人の方を対象に教えていました。もちろん、今思うと当時の自分の技術は今に比べると未熟だったとは思いますが、しっかりその時から勉強を始めました。
そして、ロンドンの大学院で「インナー・チャイルド」をテーマにした作品を作って分かったのは、自分が本当にやりたい事は、「人を癒す事、人をヒーリングする事」だと気付いたんです。父は昔から自力整体をつきつめ、人を癒してきていたのですが、父がそれをやっているから、ただ家業を継ぐという事はしたくありませんでした。しかし今、改めて自分が本当に求めている生き方と家系のルーツが重なり、納得した上で自力整体をもっとつきつめたいと思いました。どうやったら自分の身体も他の人の身体も癒せるのか、ヨガなどさまざまなやり方を試しながら、その技術を教えられるようになりたいです。
J:今後の目標
M:4月下旬に日本に帰国し、父の元で修行をすることに決めました。ただ今まで私が海外で培った経験も生かしていきたいと思っています。例えば、日本人は感情を表現するのがあまり得意とはいえず、内に思いを溜め込み、それがストレスになってしまうので、自分の心や感情を解放してもいいということを伝えたり、実際にどうすればいいのかを指導できたらと考えています。逆に海外には、ヨガなどが単なるエクササイズの一環としてではなく、自力整体を通じて日本の精神法をもっと伝え、日本と海外の架け橋的立場になりたいです。また、現在英語でクラスを教えることができるのが私一人なので、今後は英語のインストラクタープログラムを作る事と、父はすでに25冊の本を出版しているので、それの英語での翻訳をまずは始めたいです。
J:今回、90分の自力整体を初体験したのですが、とても興味深いクラスでした。実は、去年の夏前から右肩を武道の練習で負傷し(道場で練習中に負傷したのではなく、自宅で無理な練習を行ったため)、鍼やマッサージ、整体等に高いお金を払って通っていたのに未だに治らず、真理恵先生には言わなかったのですが、この一回の受講でどのくらい良くなるか、自分で実験したいと思っていました。
M:そうだったんですか?
J:はい、(右腕を垂直に上に伸ばしながら)今まで痛くて腕をこんな風にあげられなかったし、自力整体後はこうやって後ろで両手をつかめるようにもなりました!
M:すごいですね、自力整体!(笑)
J:今までいろいろ治療しましたが、全く効果がなかったので、90分のクラスでここまで治るのは本当に不思議です。こんな風に言ってしまうと、逆に読者には信用されないかもしれないですが。。。本日は本当にありがとうございました。日本での新たな修行されることを心から応援すると共に、パワーアップした真理恵さんがまたロンドンでクラスを開かれることをお待ちしております!
M:はい、頑張ります(笑)
日本に帰国してからは、おっしゃられていた「90分のプログラムでなぜここまで治るのか不思議だ」という部分を深く突き詰めていきたいと思っています。父の治療師としての観点からその技術が、どうやって自力整体の動きに繋がって行くのかを父より個人的に学んで行こうと思っています。ロンドンに年に数回ワークショップをしに帰って来ようと計画していますので、次の機会ではそういった深い部分をお伝え出来るようになれば良いなと思います。
*自力整体はホルモンバランスを整える効果もあり、体験した生徒たちからも生理痛が和らいだという話を聞かされていた。筆者自身もたった一回のクラスを受講しただけで、毎月かなり辛い生理痛に悩まされていたが、嘘のように楽になった。
矢上真理恵/ Marie Yagami
1984年兵庫県生まれ。幼少期を当時岐阜の山奥にあったヨガ健康村で4歳まで暮らす。その後兵庫西宮市に越し、18歳まで過ごす。18歳で渡米。在住9年間の内7年間をニューヨークで過ごす。ニューヨーク市にあるPratt Institute ファッションデザイン科卒業。卒業製作でOutstanding Over Achievement Award(最優秀賞)を受賞。ユニバーサル・スタジオのテレビドラマの衣装部門のインターンなどを経て衣装デザイナーとしてフリーランスになる。2009年自力整体ナビゲーター認定。2012年渡英。衣装アシスタント、フリーランスを経て2014年セントマーチンズ入学。2016年パフォーマンスデザイン学科卒業。2018年英国にてヴィンヤサフローヨガ認定。その後自力整体普及の為ロンドン、スペイン、カナダなどでワークショップを開催。
矢上予防医学研究所
https://www.jirikiseitai.jp/index.html