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英国で教育しよう!長男の巻:パブリックスクール その7

長男の巻:パブリックスクール その7

英国では義務教育が終わり、GCSEの全国試験を終えた後、さらに勉強を続けたい場合はAレベルという高校卒業資格試験のための勉強にいそしむ。パブリックスクールでは大学に入学する18歳までの一貫教育なので、GCSEが終わったあとはAレベルの試験に備えるための勉強をすることになる。学校生活では、この最後2年間は上級生待遇となる。例えば制服ではなく、独自のスーツを学校に着て行くことが許されるなど、学校の規則も少し和らぐ。そして最終学年になると最終学年の生徒だけがくつろぐことのできるコモンルームが用意されるなどの特権が出てきたりもする。課外活動の方も引き続き、音楽、スポーツ、演劇、美術など、ありとあらゆる活動が盛んで学生たちは忙しい。

さて、Aレベルだが、セントポールではGCSEの試験結果が出る半年以上前、ちょうど学校が独自に課すGCSEの模擬試験の結果が出る時期に、Aレベルで何を勉強したいかを学校に提出しなければならなかった。学校としては各生徒の希望を叶えるべく次年度の時間割を組むためにはかなりの時間が必要なのだろうが、GCSEが終わっていないのに次のAレベルの専攻科目を選択しなくてはならないのは気ぜわしかった。なぜなら希望する大学の専攻学部が入学時に求めるAレベルの履修科目を念頭に入れて専攻科目を決めねばならないにも関わらず、GCSEの結果が出ていなければ、自分が何が得意なのか、何を専攻したいのかに確信を持てないからだ。各大学は、例えば経済学部なら数学、工学部なら数学と物理、英文学部なら英文学など、その学部入学の為に必要なAレベルの履修科目をウェブサイトに掲示している。そして大学が要求してくるAレベルの履修科目数はたいていは3教科だ。

セントポールでは父母を集めたAレベルの説明会の際に大学専攻科目によって何をAレベルで専攻するのが好ましいかをプリントにして配ってくれた。長男は大学で心理学を専攻したかったので自分が勉強したい科目、また心理学部入学のためには数学を含んだサイエンス系の科目を履修していることが好ましいという条件から、数学、数学III、古代史、生物、そして化学を選択した。学校によってとれる教科数は異なるが、セントポールではAレベルは5科目まで履修可能だった。そしてAレベルの2年目には数学、生物、化学の3つに教科数を減らした。

当時、Aレベルは2段階に分かれていて1年目が終わった時にASという試験を受けるシステムになっていた。そしてASレベルの成績が2年目の学年が終わった時に受験するAレベル試験 の結果に加算されて最終Aレベルの成績が出た。GCSE、AS そしてAレベルと3年続けて年度末に大学入学選考の為に重要な受験が続き、英国の生徒は休む暇がないと思った。その後2015年度からAレベルのシステムが徐々に変わり、2018年度に長女がAレベルの受験生徒になった時はASレベルの試験はなくなり、Aレベルの成績は2年間の準備の後に受ける試験による一発勝負で最終成績が付くことになった。1年目の最後にASレベルの試験があることが、2年目の最後まで取り返しがつかないほど放っておくことを避けるには役に立つシステムだったと、気が付いたのはその時だ。いずれにせよAレベルの成績がGCSEの成績と同様、大学合格のための重要な判断材料の一つになるので学生たちはAレベルでよい成績を取るために努力する。

*学校区分の日英比較は大体下記のとおり。(英国日本婦人会発行『ロンドン暮らしのハンドブック』2017年5-8改訂版p。35参照)

Miho Uchida/内田美穂

聖心女子大学卒業後外資系銀行勤務を経て渡英、二男一女を育てる傍らオペラ学を専攻、マンチェスター大学で学士号取得。その後UCLにてオペラにおけるオリエンタリズムを研究し修士号取得。ロンドン外国記者協会会員(London Foreign Press Association)。ロンドン在住。ACT4をはじめ、日本の雑誌にて執筆中。

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